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神戸地方裁判所 昭和49年(行ウ)16号 判決

神戸市北区有野町有野二一三三番地

原告

樫本定雄

神神戸市兵庫区水木通二丁目五

被告

兵庫税務署長

橘堂平

右指定代理人

岡準三

中山昭造

風見幸信

黒木等

清原健二

井上修

主文

本件訴を却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実および理由

一、原告は、「被告は、昭和四八年四月二八日付異議決定書を取消すこと。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め、請求原因として別紙記載のとおり述べ、

被告は、本案前の申立として、「原告の訴を却下する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め、その理由として「本訴は行政事件訴訟法三条三項の裁決の取消の訴であるところ、本件裁決(異議決定)があつたのは、昭和四八年四月二八日(同年五月八日到達)であり、本訴提起は昭和四九年六月三日であるから出訴期間を徒過しているので却下されるべきである」と述べた。

二、原告は、乙号各証の成立は認めると述べ、

被告は乙第一、第二号証の各一ないし三を提出した。

三、よつて案ずるに、原告の本訴請求は、いずれも成立に争いのない乙第一号証の一ないし三を勘案すれば、被告の原告に対する昭和四四年度分ないし同四六年度分の所得税の更正処分および過少申告加算税の賦課決定処分に対する原告の異議申立に対し、被告が各昭和四八年四月二八日付でなした右異議申立を棄却する旨の決定に対し、これが取消を求めるものであることが明らかである。しかして、右異議申立を棄却する旨の決定は行政事件訴訟法三条三項にいう裁決に該当するものであるところ、前掲乙号証および弁論の全趣旨によれば、右異議申立に対する棄却決定は昭和四八年四月二八日になされ、翌五月八日原告に通知されたことが認められ、他方本訴提起が昭和四九年六月三日であることは記録上明らかである。してみると本件訴は行政事件訴訟法一四条と定める出訴期間を徒過したものであることは明らかであるから、不適法として却下を免れない。

よつて、本件訴を却下し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 乾達彦 裁判官 武田多喜子 裁判官 宗宮英俊)

別紙

原告は昭和四五年三月までに所得税の申告をなし、兵庫税務署に五万円を納付し、昭和四四年度山田吉之助氏に不動産仲介料代受領せる際、債権者たる田井与一が現場において右山田氏より受領、原告は領収書を書いたのみ、右金員一、〇〇〇万円受領していないのみならず田井与一は神戸市兵庫区山田町原野字大原山三番の一の土地一〇筆外の所有権移転登記を原告に実行すると称してだまして、右一、〇〇〇万円を受領後姿をくらまし右一〇筆の土地は田井与一が第三者に転売している。原告は神戸地方検察庁に訴える前兵庫警察署に告訴しているが警察の係の話では、右一、〇〇〇万円については田井与一の脱税に捜査の協力を税務署に依頼せよとの事で、右当時の税務係に依頼し、税務係署員もこれを了承し、一、〇〇〇万円の所得を除きたる額を完納していたのである。無申告ではない。詐取されたのであり目下検察庁で捜査中であるので取調べられたいと申出ている。

昭和四五年度については金三、七〇〇円を納付し、昭和四六年度については金三万二〇〇〇円を納め未納額はないのである。然るに昭和四八年春になつて兵庫税務署に右に関し呼び出され右事情を説明した。

然して、原告は事業税を納めて宅地建物取引業の外に宅地造成事業を行い、尚有野町において四反歩余の田を耕し農業を営んでおり、教員をしていたので教員恩給を受けているので総合所得の申告をしているのである。然るに無申告としたのは誤りである。右四四ないし四六年度は造成事業の支出が多く赤字の経済であるので経費を差引けば所得は無いのである。

然るに、被告は宅地建物取引業とは無関係であるとして昭和四八年四月二八日異議申立を却下したのである。昭和四八年五月一四日付で国税不服審判所に不服審判の申立をしたところ同四九年五月一七日付で審査請求をいずれも棄却するとの審判を受け送達されたので提訴する。

1. 無申告というも前述のとおり申告しているので異議決定の理由の判断は間違つている。過少申告ではない。

2. 収入金一、一五三万円のうち、一、〇〇〇万円は詐偽により持逃げされ、神戸地方検察庁に告訴し目下逃亡先を調査しているのであるが所得ではないので神戸地方検察庁に聞き合せ調査されたい旨申出ているのに措信しないと審判している。

3. 支出した経費は三、七一七万四五五九円と計算するも、それ以上の支出をしているのは提出証拠により明らかであるのに宅地取引業に関し出費したのでないと言うが、前述のとおり原告の収入は教員としての恩給、農業収入、宅地造成の費用、宅地建物取引業の収入とこれに関し消費したる額の差額があれば所得となるがいずれも毎年所得はマイナスであるのにこれらの支出を不動産取引業にしぼつて判断し、原告の請求を棄却したのは総合所得で収支を計算する所得税法からして審判は誤りである。

4. 昭和四五年度の収入については誤りないが、総合所得で所得税を賦課する所得税法では事業税を兵庫県税で支払つて営業せるものについて、原告の提出せる証拠一〇四〇万二〇一〇円を認めず、税務署が調査せる他の事業者の経費一二六万一六一二円、しかもそれは不動産の取引業の経費を援用して実際総合所得の収入を収入とするからには支出においても全支出当然支出とするのが合理的であるのにこれをしないのは誤りで判断違脱している。

5. 昭和四六年度収入については一〇〇万円に争いないと判断するが、これは土地売上代金の収入のごとく判断しているが、これは土地の境界のため確認せる際原告所有土地を造成していた造成費を福谷建設に支払つていたのを交換相手に負担してもらつて受領し、福谷建設に支払つた領収証を提出してあるもので原告の収入ではない。その証拠は既に提出して支出の総計は一〇四〇万二〇一〇円であるのにこれを他の業者の平均支出額を援用したのは誤りである。

以上

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